
2026年度の診療報酬改定では、病院給食に関わる重要な見直しが行われます。
変わるポイントは、大きく3つです。
①入院時食事療養費の基準額引き上げ
②患者が支払う食事療養標準負担額(自己負担額)の変更
③嚥下調整食が入院時食事療養費に係る特別食加算の対象に追加
2026年度診療報酬改定で病院給食がどう変わるのか、いつから、何が、いくら変わるのか。
医療機関は、これから何を準備すべきか。
今回の記事では、それらを分かりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。
2026年度診療報酬改定で、病院給食に関わる変更は、主に以下のポイントです。
入院時食事療養費とは、入院患者に提供される食事に対する費用です。
2026年6月1日から、入院時食事療養費は1食あたり40円引き上げられます。
代表的な区分である入院時食事療養(Ⅰ)の通常食では、1食690円から730円へ変更されます。
今回の見直しは、食材料費や光熱・水道費の上昇に対応した施策。
とはいえ、これらのコストは日夜変動しつづけるものでもあります。
したがって、病院側には引き続き、原価管理、献立設計、人員配置、調理工程の効率化が求められます。
入院時食事療養費の見直しに伴い、患者が支払う食事療養標準負担額も2026年6月1日から変更されます。
例えば一般区分の自己負担額は、1食あたり510円から550円へ引き上げられます。
ここで病院側が注意すべきなのは、患者負担額の変更は、単に医事課だけの作業では終わらないという点です。
所得区分や難病指定の有無などによって、今回の変更額は異なります。
最新情報を確認し、説明が食い違わないよう、掲示物の表記や職員の認識を統一しておく必要があります。
嚥下調整食とは、患者の状態に応じて、食形態、まとまりやすさ、べたつき、離水、栄養量、食べやすさ、安全性に配慮した食事のこと。
今回の改正から、入院時食事療養費に係る特別食加算の対象として、嚥下調整食が新たに評価されることになりました。
算定要件としては、摂食機能または嚥下機能が低下した患者に対して、医師の発行する食事箋に基づき、適切な栄養量および内容を有する嚥下調整食を提供することが示されています。
嚥下調整食は、「医師の食事箋」「管理栄養士による栄養管理」「厨房での再現性」といった、部門をまたぐ重要な治療食として位置付けられることになります。
2026年度診療報酬改定に向けて、医療機関が対応すべきポイントは、主に次の通りです。
最初に必要なのは、金額変更への対応です。
今回は入院時食事療養費の基準額と、患者が支払う食事療養標準負担額の両方が変わります。
医事会計システム、電子カルテ、オーダリングシステム、食事オーダー、請求データに影響が出る可能性があります。
特に次の項目を優先的に確認しておきましょう。
・2026年6月1日を境に、新旧金額が正しく切り替わるか。
・一般、低所得者Ⅱ、低所得者Ⅰ、指定難病患者など、区分ごとの金額が正しく登録されているか。
・月またぎ入院の場合に、5月31日以前と6月1日以降の金額が正しく分かれるか。
・入院案内や院内掲示の金額と、請求システム上の金額が一致しているか。
・窓口で説明する内容が、病棟や栄養部門にも共有されているか。
今回の改定には自己負担額の変更を含むため、病院職員への質問が寄せられることが予想されます。
そのため、単に金額表を更新するだけでなく、説明の導線を整える必要があります。
例えば、
・院内掲示では、「2026年6月1日から変更」と明記する。
・入院案内では、所得区分によって負担額が異なることを書く。
・指定難病患者など、一部据え置きとなる区分がある場合は誤解が生じないようにする。
・病棟スタッフが質問を受けたときに、医事課へつなぐ基準を決めておく。
・ホームページにも同じ内容を掲載し、事前に確認できるようにする。
ここで重要なのは、説明責任を医事課だけに押し込めないこと。
混乱が生じないよう、どこで聞いても同じ説明ができる状態にしておきましょう。
嚥下調整食は、ただ「ミキサー食」「きざみ食」「ソフト食」といった名称があるだけでは不十分です。
それらを安定して提供でき、必要に応じて改善できる仕組みづくりが大切です。
例えば、次のような点を確認しておきましょう。
・食形態ごとの定義が明確か。
・医師の食事箋と食形態が紐づいているか。
・管理栄養士が、栄養量と食形態をあわせて確認できているか。
・厨房で安定して再現できる調理手順になっているか。
・盛付や配膳時に、別の食形態と混同しない仕組みがあるか。
・病棟から、むせ込み、食べ残し、食事時間、食べにくさの情報がフィードバックされるか。
・戻ってきた情報を、次回以降の食事内容に反映できるか。
嚥下調整食は、調理技術だけの問題ではありません。
食事箋、栄養管理、厨房オペレーション、病棟からのフィードバックがつながって、初めて成立します。
ここまで見てくると、2026年度診療報酬改定への対応は、金額変更だけなら事務対応で済みます。
ただし嚥下調整食まで含めると、「食形態の整理」「医師・管理栄養士・厨房・病棟をまたぐ体制構築」「調理手順の標準化と教育体制」など、栄養部門だけにとどまらない運用の整備が必要になります。
一方で、現時点でも運営上の課題を抱えている病院は多いことでしょう。
例えば、
・調理スタッフの採用が難しい
・欠員時に厨房が回りにくい
・嚥下調整食の形態が担当者によってばらつく
・管理栄養士が厨房対応に追われている
・病棟からのフィードバックが厨房に届きにくい
・治療食、アレルギー食、嚥下調整食の個別対応が増えている
・食材費や人件費の管理が難しくなっている
このような場合は改定対応をきっかけに、病院給食の運営体制そのものを見直すのも一手です。
2026年度診療報酬改定では、入院時食事療養費の引き上げと、嚥下調整食に関する新たな評価が示されています。
入院時食事療養(Ⅰ)の通常食は1食690円から730円へ引き上げられる内容であり、嚥下調整食についても特別食加算の対象として新たに評価されます。
医療機関では、金額変更への対応、患者説明、システム設定、嚥下調整食の運用確認など、複数の準備が必要です。
ただし、今回の改定を単なる制度対応で終わらせるのではなく、病院給食の提供体制を点検する機会として捉えることが重要です。
食材費や人件費の上昇、調理スタッフの採用難、治療食・嚥下調整食への対応、管理栄養士の業務負荷など、病院給食を取り巻く課題は複雑化しています。
入院患者に安全で安定した食事を提供し続けるためには、制度情報の確認だけでなく、厨房運営、栄養管理、多職種連携を一体で見直すことが求められます。
病院給食の運営体制や嚥下調整食への対応に課題がある場合は、自院での改善に加え、給食委託会社など外部の専門的な知見を活用しながら、現場に合った運用方法を整理することも一つの選択肢です。
「令和8年度診療報酬改定について」、厚生労働省ホームページ、2026年5月26日閲覧。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
「個別改定項目について(令和8年2月13日)」、厚生労働省ホームページ、2026年2月13日公開、2026年5月26日閲覧。
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf
この記事は、厚生労働省が公表している令和8年度診療報酬改定資料をもとに、株式会社LEOCが病院給食運営の観点から作成しています。
本記事は、医療機関における食事提供体制の見直しに役立つ一般的な情報提供を目的としたものです。個別の算定可否や届出要件を保証するものではありません。
制度の詳細や算定可否については、必ず最新の告示・通知・疑義解釈、地方厚生局等の情報をご確認ください。